その風景をイメージして目を閉じると、寓話やたとえ話としてではなく、僕らのいるここが地上であり、海の底でもあるという父親の言葉の意味がわかる気がした。―「ののの」
特典、短編「恐山の豚」収録冊子付きです。
小説家・太田靖久。
2010年に表題作「ののの」で新潮新人賞を受賞しデビュー。辻原登に激賞された「リバーサイド」など、文芸誌に非凡な才能を見せつける作品を発表されています。
自己と他者、善と悪、意識と無意識、現実と思い出。あらゆる境界線が揺らいでいく、珠玉の作品集。兄と父の死、本が積み重なった異形の「山」を思いながら、中華料理屋だった家に暮らす青年の日々を描いた「ののの」、十代を断片的に超えていく「かぜまち」、ドローンを主人公に据えた遥かなる旅「ろんど」の三篇を収録します。
出版社は〈書肆汽水域〉。「自分が売りたい本をつくりたい」という思いから、書店員の北田博充さんが立ち上げた個人出版社です。文学へ並々ならぬ情熱を注ぐ、北田さんの確かな目利きを存分に堪能できる一冊。裏表紙には7人の書店員による推薦文を掲載。当店スタッフも文章を書かせていただきました。題字、大竹伸朗。