こつこつと階段を登ってくる
剥き出しのかかとの骨
ベル 遠く鳴り
別の患者たちが礼を述べている
白をタフタフと着た医者だろう
腫れた喉から喉へとハシゴして
冥土カフェで休憩する
―「りんごの葬り方」(部分)
息を呑むほど、美しい詩集。
ドイツ在住の作家・多和田葉子さんが綴る17編の詩。いずれも書き下ろしの作品です。声に出して読むと、歯切れ良いリズムが心地よく、言葉の光が立ち上がるように響きわたります。
文字は二つ折りのシートに活版で印刷され、それぞれの詩を独立した作品としてお楽しみいただけます。活版を手がけるのは嘉瑞工房。夫婦函は美篶堂による手作りの一品です。函を開け、シートを広げ、詩を読む。その動作自体が儀礼の所作のようです。特別な詩集。限定1000部。
望月通陽さんのスケッチブックとの出会いから、谷川恵さんが「宝物になるような」「大切な人にプレゼントしたくなるような」本をつくりたいという思いから、おひとりで始められた出版社・ゆめある舎から。