『遅れ時計の詩人』に続き、大阪の版元・編集工房ノア社主が記す、今はなき作家たちへの追憶の書ふたたび。執筆期間は2006年で終わる前著から続いて2007年から2018年まで。登場するのは、庄野英二、杉山平一、塔和子、鶴見俊輔、川崎彰彦ら、そして本書のタイトルともつながる、大作『やちまた』を著した足立巻一。ともに構想を練り、ともに本を作った。様々な想いあふれ、しかし筆は淡々と数々の追想を綴る。そこからは、著者である社主・涸沢純平氏の本づくりへの姿勢と矜持、そして忘れ得ぬ人々への親愛の情が感じられます。ノアだからこそ生まれた文章、ノアでこそ残せ得た作品。本書は、それらへと近づく良き道案内となると同時に、帯文で山田稔氏が述べるように「関西の文学界にとって貴重な人間記録ともなっている」と言えるでしょう。思い起こし、記すことでまた生き続ける作家たち。