独創的な和菓子で多くのファンを魅了する杉山早陽子さん主宰の「御菓子丸」。立ち上げから10周年となる節目の年に、これまで発表してきた30の菓子を紹介する作品集が刊行されました。
実店舗を持たずオンラインでの販売のほか、京の奥座敷・鷹峯の一軒家にて月に数度の喫茶を開くなど、アプローチに合わせて相手の五感をあざやかに刺激する和菓子を手掛けてきた御菓子丸。
代表作「鉱物の実」をはじめ「陽の出」「蝶が花の蜜を吸う」「苔筵」「かぜきり」「Like Chocolate」「しじま」…素材や製法、食感、味、姿形に至るまで、季節のうつろいの一瞬を丁寧に落とし込み、静かに新鮮な体験を齎すその世界観を、写真家・来田猛氏による撮り下ろしの写真と杉山早陽子さんの言葉を付してお送りします。菓子ごとの解説のほか、創作の工夫やエッセイなども交えつつ、御菓子丸の哲学を存分に堪能いただける美しい一冊となりました。(岡本)
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御菓子丸が生み出す菓子は、高度な構成によって象りうるはずもないものを象るという点で、厳密に和菓子である。しかし、それが同時に、「崩れるもの」というイメージの徹底において理念的な事物を、ひいては自然物さえも永遠の相のもとで開示するのならば、それは存在したことのなかった和菓子なのかもしれない。
― 藤田 周(本書「御菓子丸、存在しないものを象る和菓子」より)
著者:杉山早陽子
写真:来田猛 執筆:杉山早陽子・藤田周 デザイン:須山悠里・小河原美波
発行:torch press
サイズ:252mm × 186mm
その他:168p / ハードカバー / 日英併記