金持ち夫婦の道楽として庭の洞穴で「隠者」役をさせられる男、蝶の修理に血道をあげる少年、馬に食べられたボタンを執念で取り返す少女、一人の生徒の空想からとんでもない事態に発展する小学校…。ミュージシャンから転身した英国の作家、ミック・ジャクソンによる奇妙な奇妙な10のお話。ありえなさそうで、でも世界のどこかにはこんな変な話もあるのかしら、と読者の好奇心と読書欲をちょっとくすぐる洒落たストーリー群。一口に「奇妙な味」とはいってもイギリスらしいペーソスが随所に織り込まれた独特の風味溢れる短編集です。隠れたい、逃げ出したい、行きたくない…登場人物たちのおかしな消極さと不気味な頑固さがからみあう、まるで地の果てから風が吹いてくるような、不思議な淋しさと滑稽さがまじったお話をどうぞ。デイヴィッド・ロバーツによる薄気味悪い挿絵もいい味です。

著者：ミック・ジャクソン
翻訳：田内志文
発行：東京創元社（創元推理文庫）
サイズ：105mm x 110mm
その他：221P / ソフトカバー