彫刻家・舟越桂が自身の子どものためだけに製作したおもちゃやオブジェ。それらを集め、一冊の写真集に仕立てた本書は、その愛らしさだけではなく、他の何にも邪魔されないイノセントな空気に包まれています。表紙を飾る愛息の横顔を模したハンガーはあまりにも有名ですが、その他にも、木っ端の家や人形、かぶってくれなかった帽子、様々な素材でできた教会など、その時その時に「喜ぶだろうか」と思いながら精一杯制作した気持ちが伝わってくる。同時に、子を思う一人の父親としての心情も見る者に静かな感動を与える作品集でもあります。本書は雑誌『ミセス』での90年代の連載をまとめたものですが、作品制作の多くは80年代前半であり、過ぎ去った日々を思い返して綴られたエッセイも独特の味わいに満ちて素晴らしい。家族への愛と思い出と。初版を発行したすえもりブックス版の形そのままに、現代企画室から2024年に増補新版として復刊されたものとなります。