口笛となるまでの息冬桜 / 室外機の上と下なる猫の恋 / 欠伸より大きな柿を貰ひけり / 在宅といふ夕蝉の終はり方 / サイダーや花屋の前の男たち
いま最も期待されている新鋭俳人・黒岩徳将の第一句集。十代で夏井いつき氏と出会ったことで俳句に目覚め、若き俳人として歩んできたその句の世界。日常の中に垣間見える向こう側とこちら側の隙間を、口笛でも吹くように飄々とえがいた独特のイメージ。詩歌は現実から離れさせてくれると同時に現実世界に踏みとどまらせてくれる重石のようなものでもある、と後書きで語られているように、現実と感性のあわいにある言葉が澄んだ水のようにこぼれ落ちます。「体温を感じられるものを書きたい」という思いで作り続ける句をどうぞお楽しみください。巻き込み巻き込まれて生きていく渦のイメージに沿った装丁も独特の美しさ。
黒岩徳将(くろいわ・とくまさ)
1990年、兵庫県神戸市生まれ。2006年、京都府洛南高等学校俳句創作部にて句作開始。「いつき組」所属。今井聖主宰「街」同人。第5・6回石田波郷新人賞奨励賞。2017年度「街未来区賞」。第3回俳句大学新人賞特別賞。2023年度「街賞」。アンソロジー『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』入集。共著に『新興俳句アンソロジー』。現代俳句協会青年部長。