一枚の紙から折りあげられた一艘の小舟は大海原で未知の存在や体験と出会い、旅をする。人のような姿の、あるいは海の生きもの、そのどれもが不思議な造形をしており、自然は圧倒的なまでに美しく、隅々まで描きこまれた物語の世界に読み手は想像力を掻き立てられながら、小舟とともに旅をする。

文字はなく、全編を精緻なモノクロームの絵で埋め尽くされた絵本。静けさと力強さを合わせ持つこの作品は、広大な世界を描きつつも読み進めるうちにどんどん自分の内側に分け入るような、ミクロとマクロの視点が交錯する感覚が幻想的な印象を一層色濃くさせる。

大型の判型、こだわり抜かれた紙質、線の重なりが生み出す圧倒的な描写。紙の本を読むという豊かさを存分に感じられる一冊。

翻訳家の岸本佐知子さんを解説に、ショーン・タン作品で知られる田中優子さんを編集に迎え、クラフト・エヴィング商會の装幀・デザインで送る壮大な物語。（岡本）

「ティム・バートンやサルバドール・ダリやジャック・クストーの血を脈々と受け継ぎ、ショーン・タンとエドワード・ゴーリーを両親にもつ水棲の子供……とでも言えば、この本の素晴らしさを少しでもわかってもらえるだろうか。」
ブライアン・セルズニック（「ユゴーの不思議な発見」著者）――帯文より

著者：ぺーター・ヴァン・デン・エンデ
発行：求龍堂
サイズ：230mm × 305mm（A4変形）
その他：96p / ハードカバー