京都大学・人文科学研究所にて准教授であり、農業・食の思想史を研究する藤原辰史さん。
いつも楽しみにしてる大学近くの無人市。「父が好きなので」というコメントに惹かれ購入したトマトの苗。
水分を吸収したばかりのトマトの茎は折れやすい。不注意から花がついている茎を折ってしまい、懺悔に耐えない著者は、一筋の望みを胸に即席の道具で水耕栽培をはじめる。もういよいよダメかと思うも水を換えること一週間、折れた茎の側面から根が出る。
人間は果たして植物より高等か?そんな疑問から始まり、植物の持つ要素、歴史、思想を介し、植物と人間の関係を人文学の視点から考え巡らせる本書。
古典から現代まで、ジャンルも超えた縦横無尽な書見の数々は、問いから問いへのひらめきに富んだもの。好奇心に溢れた藤原さんの日々のひとこま、芸術や文学に表現される植物への思考は未知の世界が広大であることを示し、想像力に深く働きかける1冊です。
(2023.6.19 原口)