「百姓」は今日ではたんに農民を意味する言葉ではない。
百姓はあらゆる生活のノウハウのことを意味していて、
できるだけたくさんのそれらのノウハウに通暁した生活人を、
新しい意味で「百姓」と呼ぼうというのが、今日の流れである。
(「創刊によせて」中沢新一)
効率性や規模の拡大を最優先とする経済の在り方、人間ひとりひとりがそれに順応であるよう求められる巨大な社会のシステムに疑問を持ち、新しい生き方を探求する人々の問いと実践の物語を紹介する雑誌『新百姓』。経済面においての合理性が重要視され、口にするもの、着るもの、住む家を、自分たちの手でつくることが困難になり、飲み水でさえも、お金を払わなければ得られない当今。益々依存せざるを得ない社会システムの中で、少しだけ視点をずらし、日々を生きるうえで大切にしていたい豊かさについて考えます。
高田馬場のジャズスポット「イントロ」、高円寺に位置する古道具屋「新しい人」の取材をはじめ、創造性の正体と資本主義の齎す鈍い思考について探求した、世界的な霊長類研究者・山極壽一氏らによるインタビューなどを収録。巻末には、人間らしさそのものと向き合い、社会の在るべき本質を見つめ直すヒントを与えてくれる書籍や音楽、映画を紹介した特集ページも。
わたしたちが忘れつつある、人類が当たり前としていた「つくる知恵」と「つくる喜び」。利便性や結果ばかりを求める時流のなかで、型にはまらない寄り道を選ぶという雄大さ。本来生活の背景に存在していたはずの鷹揚さに思いを巡らし、提示する、気づきと解放性に満ちた一冊です。
本誌は、大量に刷られ、棄てられていく現在の出版や流通とは異なる、新たな出版と書店のあり方を模索する試みとして増刷は行われません。0号となる創刊号は限定888部、いずれもナンバリング付きでお届けいたします。(韓)