動物観は人間観を映す一種の鏡である。人は動物を通して人間を、そして人間社会を見ている。
つまり、地獄の動物たちは、当時の人間と人間社会の鏡なのである。
そしてそれは、きっと今も変わらない。
もし、今のあなたの地獄に動物がいるとしたのなら、それはどんな動物だろう?(本文より)
獣医大学を卒業後、食品衛生業務と自然科学書籍編集者を経てイラストレーター / デザイナーとして活動を行うオカモトレイコさん第三作目となるイラストエッセイ集。
地獄を描いた12世紀の絵巻物・国宝『地獄草紙』にある、口から火を吐く巨大な鶏が描かれた「鶏地獄」。はじめて目にしたオカモトさんは「なぜ地獄に鶏がいるのか?」と疑問を抱き、地獄に住まう牛、馬、象、犬、カラス、鶏、蛇の七種の動物にまつわる伝承や神話について深く探究するようになりました。かつて古代につたわる「動物観」を浮き出させ、各々の生物学的な側面もふまえたオカモトさんの見解をまとめた文を収録。古い壁画や石碑、器物に刻まれた模様や字を写しとる拓本の技法をアレンジし制作されたイラストレーションも圧巻です。これまで意識の向くことの少なかった、世紀と時代をも超える身近な怪異を存分にお楽しみいただける一作。