「ぼくは昨日よりもよい店づくりをしたいし、一週間前よりも風通しのいい会社をつくりたい。」
-本文より
本書は広島県庄原市の書店「ウィー東城店」の佐藤友則さんの現在までの人生と、その書店の姿を綴った1冊。
佐藤さんの話を2年にわたって聞いたものを、島田潤一郎さんがまとめました。
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人口約7000人の町にある「ウィー東城店」。
老舗書店の長男だった佐藤さんは、町民の相談ごとに耳を傾け続けることで、赤字続きだった店を立て直します。
「電化製品がこわれた」
「年賀状の字がもう書けない」
「普通免許をとりたいけど、母国語のポルトガル語しか読めない」
町の人びとは、本屋へ行けばなにかヒントがある、と考えて、本屋にやってきます。
その本にたいする信頼、そして本を売る人への信頼が、ウィー東城店を特別な店に変えていきます。
本書が感動的なのは、ウィー東城店が町の人びとの相談ごとのひとつとして、次々に学校へ行けなかった若者たちを雇用し、彼らが社会へ出るための後押しをしていることです。本のある場所で、本を求める人と会話することが、若者たちの心を少しずつ癒やしていきます。本書はその貴重な記録でもあります。
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-夏葉社HPより
大学一年生の冬、何気ないことがきっかけで入塾した「青年塾」。佐藤さんはここから人生が変わったと語っています。
「志ある市井の人を育てなければ社会はよくならない」上甲晃さんという人が主宰していた塾で出会ったそれぞれの立場で働く大人達の、ひたむきに何かを学び得ようとする姿。
佐藤友則さんの情熱がいつも曇りを知らないのは、目前にこうした大人の姿を見ていたからなのでしょう。気持ちを前に向い直す出会いや心意気に、熱いものが湧きたつ1冊。
装画・挿絵はひうち棚さん。文章の表情を親し気に、誘います。