美術作家であり文筆家・永井宏さんが90年代前半に葉山で立ち上げた「サンライト・ギャラリー」。そこに集う人々との交流、自身の内面やささやかな出来事に触れた文章が本書には集められています。朗らかで穏やか、明るい空のような気持ちの良さ。永井さんの人柄、そしてその文章を慕って様々な人が自身の活動をはじめ今に至っていますが、その軌跡のひとつを辿る代表作とも言える本書は97年の初版から数えてこれで二度めの復刊。交流のスケッチだけでなく、冒頭の巣箱の話にはじまる一連のエッセイは、庭で一人ゆっくりとくつろぐかのような魅力と静けさに満ちています。つながりながらも、個を大切にする。そんな軽やかな思索が随所に散りばめられた清々しい一冊。編集として携わり続けた本書の版元・信陽堂主宰の丹治史彦さん、そして交流の深かった鎌倉「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」店主・堀内隆志さんの寄稿も巻末に掲載され、永井さんの足跡をゆっくりと今振り返ることのできる最適の書でもあります。