原題はThe Needleworker's Dictionary。すぐれた手芸家であり探求者でもある著者による手芸のすべてを網羅した本書。遠い時代、様々な民族、多様な手法で人々の暮らしを彩り実用的にも重要な役割を果たしてきた手仕事の数々。その長い歴史に敬意を払いつつ本書をまとめた情熱には目をみはるものがあります。刺繍などの針仕事に多くが割かれていますが、眺めていると、事典ながらも人類の暮らしの歩みも伝わるような臨場感が伝わってきます。実際の素晴らしい作品も随所に大判の写真で掲載されており、それだけでも見る価値が。こんなに多様な手芸品がこんなに色んな国と地域で発展してきたのだと、思いを馳せたくなる一冊。手芸家を目指す人はもちろん、手工芸の歩みに興味のある人にもおすすめです。原書の形を変えない函入りの大部な造本で、それだけでも内容の充実が伝わります。本体にかけられたビニールカバーにヨレと欠けがみられます。ほか、函を含む全体に経年による変色・くたびれはみられますが、本文を楽しむには問題なく、概ね古書として標準的な状態です。