「お互に知りあって八年したとき/(しかも互によく知りあっていたと言えよう)/彼らの愛はとつぜん紛失した/他の人たちの帽子やすてっきがなくなるように」(「即物的物語詩」より)
ケストナーが「人生処方詩集」以前に発表した詩集から、板倉鞆音がそれぞれ小さな章立てをして編み直した思潮社版「ケストナァ詩集」。人生に疲れ、それでも希望を感じ、時に涙し時に苦笑し…。そのアイロニーとユーモアが交錯する独特の詩世界を、これまた無二の優美さと知性でもって日本語で表現した板倉訳の見事さ。この2つが美しい出会いを果たした薄いながらも大きな魅力を宿した一冊です。カバー一部袖部分に小さな折れアトあり、それ以外は目立つ難もなく古書として標準的な状態です。帯付き。