140年以上前に誕生した、ロシアの文豪トルストイの名作。イワンの馬鹿と、ふたりの兄、耳が聞こえない妹のマラーニャ、老悪魔と3匹の小悪魔のお話です。
兄のひとり、軍人のセミヨンは恐怖で周りを支配していて、兵隊がよく死んだり逃げたりして、いつも人間が足りません。もう一人の兄、商人のタラスは、やたら税を増やして周りの人達をお金に困らせています。お金さえ見せれば、だれもがなんでもやるようになるからです。イワンは馬鹿です。ずっとそういう風に言われ、自分でも馬鹿と言っています。そんな兄弟たちの元へ悪魔たちがやってきて…。
こちらは主に児童文学の翻訳をされている小宮由さんの新訳なのですが、なんと小宮由さんのおじいさまはトルストイ文学の翻訳者北御門二郎さんです。遠くの文学が私たちの手のひらに届くまでの、情熱や縁について、巡り合わせについてのあとがきも、必読の一冊です。ハンス・フィッシャーの描く悪魔や藁束の兵隊の表現も素晴らしく、細部まで行き届き、美しくも親しみやすい装丁は櫻井久さん。内容、外装すべてにおいて丁寧な造りです。
※小学校高学年以上の学習漢字にはルビがふってあります。
(原口)