うとうと　と / 眠りに落ちそうな / 昼 ー / 私のネクタイピンを / そっとぬ こうとするのはどなたの手です…（「白い手」）

詩人・尾形亀之助の詩集がまた一冊待望の刊行となりました。「カステーラのような明るい夜」という奇妙で牧歌的な表題から想われるこの一人の詩人の世界。その稀有な世界を形にしたのは、編集の詩人・西尾勝彦さん。本書は、日頃「亀之助気質」なる言葉とともに亀之助を愛してやまぬ西尾さんによる、詩集作品としても書物としても貴重な一作です。悠揚と明るく、しかしどこか淋しく遠い亀之助のことば。世の中と乖離して生き、40代の若さで不遇の死を迎えたその詩業。現在は気軽に触れることの難しいその詩の数々をぜひ手にとってご覧ください。今回の刊行に際し、旧仮名遣いから新仮名遣いへと改められているのも特徴です。ほの明るくあたたかみのある装画は保光敏将さん。装丁を手がけたのはクラフト・エヴィング商會。そして版元の七月堂や校正を担った航星舎など、携わった人々の努力と熱によって編み出された美しい一冊です。