長女の安西カオリさんが語る「父・安西水丸」の姿は、お気に入りのものたちや情景と共にありました。
行く先々で土産物店に立ち寄っては集めていたというスノードーム、イギリスの窯元まで彼の足を運ばせたブルーウィローの食器、食べることも作ることも好きだったというカレー、背表紙の箸がすり切れるまで読み込んだ一冊の本と出会った、若き日のニューヨークの街角……。
本文はすべてブルーで印刷されており、訪れた場所で、しばしばブルーインクの万年筆を使ってスケッチをしたという安西水丸さんの絵も随所に添えられています。
「自分の好きなものを見つけることがいかに大切かつねづね説いていた」(p.54)という氏が、絵を描くことと共に生涯を通じて愛したものたち。
「父」に対する自身の想像を時折交えながら、古いアルバムを見返すように綴られた、清新なエッセイです。