知らぬ間に気鬱の病にかかったとおぼしき「ぼく」は、友人のハリス、ジョージ、そして犬のモンモランシーを伴ってテムズ川下りを始める。ちょっぴりの冒険心とおしゃべりを友として…。19世紀に活躍したイギリスの作家、ジェローム・K・ジェロームのこの小説は、暇を持て余した三人の高等遊民たちがひたすら呑気に会話をしながらボートで川を下ってゆく、ただそれだけ...ではなく、そこに散りばめられたイギリスの自然と風俗や歴史への知識、上質な諧謔、そしてまるで室内劇(厳密にはボート上ですが)のような、いつ果てるともわからぬ言葉の応酬と遊び心、そんな様々な要素を含んだ実にイギリスらしいユーモアが発露した愛すべき作品です。丸谷才一による熟練の訳もなめらかで読みやすく、一度このボートの男たちの世界に踏み込んだら、旅が終わるのが寂しくなる、そんな気持ちになるかしれません。ウッドハウスなどが好きな方にもぜひ手にとって欲しい、中公文庫の海外作品のなかでも長く愛される名作です。
商品情報 |
著者 | ジェローム・K・ジェローム |
訳 | 丸谷才一 |
発行 | 中央公論社(中公文庫) |
サイズ | 110mm x 150mm |
その他 | 321P、ソフトカバー |