奈良住まいの詩人・西尾勝彦さんから届いたこちらの詩集は、まるごと「奈良」をうたった一冊。「緑色の錆びた自転車に乗って / 坂道を下ってゆく / いりくんだ古い町 / 失われた塔の / 幻を見る」…「無題」とされたこちらの詩をはじめ、ゆっくりとたゆたうような、のんびり奈良の古い町並みを散歩するような、そんな作品が10篇おさめられています。読んだだけでは奈良かどうかはわからない、でも記憶の中のどこか遠い町を思い出す、そしてそんな町にはきっと奈良がふさわしい。読む人がそう静かに納得できるような雰囲気がただよう不思議な詩集です。こちらは西尾さん自身が主宰する「のほほん社」からの刊行第一作。奈良生まれの翻訳家・松嶋友紀さんによる英訳も添えられていますので、異国の人へのおみやげにも。