一冊の絵本がきっかけになる。読まなければ何も始まらない。 どうか、読んでください、と祈る。ー『とうだい』より こんなに静かで、確かに力強い。そういうエッセイに会うと、もっと本が読みたくなります。著者は、長野県茅野市の老舗本屋「今井書店」の店主・高村志保さん。「私にとって絵本は帰る場所だ。」と高村さんは言い、人生を辿ると、灯台のように絵本の記憶が浮かぶ。両親や自身の子どもとの会話、本屋や絵本を介して出会った人々との物語を巡りながら、紡がれていく言葉たち。『おやすみなさいフランシス』『かさもっておむかえ』『ぐるんぱのようちえん』…、誰もが触れてきた名作をなぞっているからか、どのエピソードもどこか近くに感じてしまいます。書店主はじめ、人や街を見てきた誰かの、静かな物語を好んで出版してきた岬書店、夏葉社らしい味わい。素朴で美しい、文章の淡い輝きを、じっくり堪能する一冊です。装画はきくちちきさん。
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