ピアニストによる子守唄。
本作は、旧東ドイツ出身のピアニスト Henning Schmiedt(ヘニング・シュミート)がバッハのゴルドベルグ変奏曲をモチーフとして録音したピアノ曲集。グールドの演奏などで知られるゴルドベルグは、不眠症に悩んだ伯爵に依頼されバッハが演奏した逸話が残されている変奏曲。このエピソードに着想を得たピアニストは、そのメロディを織り込みながら、より現代的な方法で眠れぬ夜の休息のためのピアノを奏でます。ピアノ内部の音や空間の音を採録しながら、時にミュート演奏されるアップライト・ピアノは、闇夜に灯る光明のように優しく響き、ゆっくりと心を鎮めるような作用をもたらします。静けさの中にも、このピアニストに特有の叙情的な旋律は止むことなく寄り添います。煌めく星空のようなシルバーのインクと黒地の厚紙、トレーシングペーパーを用い、世界観を反映させたプロダクトワークも素晴らしい一作。
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