「𠮷田くんの歌は、通常注目されるはずの物事の因果から視線を逸らす、あるいは解像度を下げることによって、世界がもともと持っていた美しさを発見している。既存の文脈の残像が残っているからこそ、彼の短歌は無軌道でアヴァンギャルドなものではなく、どこか懐かしいような抒情性を湛えているのだと思う。」(堂園昌彦)
1989年生まれの歌人、ドラマトゥルク、舞台制作者、𠮷田恭大による歌集。個人的なノスタルジーや情景の細部よりも、世界の構造や言葉の機能に目を向けることで生まれる都市の歌。それらは、都市のシステムのなかに生きる我々に、決して誰も見なかった光景に感じるアクロバティックな懐かしさのような感覚をもたらします。デザインやレイアウトを「いぬのせなか座」主宰の山本浩貴+hが担当。円や長方形などを用いたページごとに異なるレイアウトは、まだ見ぬ懐かしさを喚起する言語のコンポジションと響きあい、「どこか向こう側への扉」を開きます。コデックス装、プラスチックカバーなど造本においても特別な存在感を放つ一冊。同封される小冊子には、荻原裕幸、堂園昌彦による寄稿を収録。
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