ペローの童話を下敷きに、サラ・ムーンが幼い少女を主体として新たに生まれ変わらせた幻想的な「赤ずきん」の物語。舞台を現代にし、陰影に富んだモノクロの夜の街をマントをまといさまよう少女。どこか不穏な空気、無垢でありながら物憂げな少女の表情、忍び寄る狼の影。古来より様々な隠喩に用いられたこの物語が、彼女独自の解釈によって美しく妖しい魅力に満ちたものに変容し、何よりも赤ずきん役の少女のメランコリックな表情がいっそうこの作品に奥行きを与えています。無邪気な子どもらしさ、という観点からは離れますが、これもまた子どもの魅力のひとつを引き出した忘れ難い作品。西村書店の「ワンス・アポンナ・タイム・シリーズ」より。ぶしい、当時の岩波写真文庫の編集長でもあった名取洋之介をうならせた名著です。こちらは赤瀬川原平セレクトによる復刻版。