「Spectator」や「ソトコト」などで近年特集が組まれ、オルタナカルチャーの文脈でも注目される発酵。本書は、大学で文化人類学を学んだ後、フランスで美術を学びデザイナーとして独立、発酵食品のデザインを多く手がけるうちに「発酵デザイナー」を名乗ることとなった異色の経歴を持つ著者による初の本格的な単著。その創世にはじまり、レヴィ=ストロースの「ブリコラージュ」との連関、各地で伝承されてきた郷土文化、ヒトと菌の贈与経済、現場の人々のワークスタイル、ライフスタイルとしての受容、テクノロジーとの関係などなど実に多様なトピックを経巡る発酵カルチャーの冒険。一見、それぞれに前提とするべき知識が多いようにも思える内容ながら、一貫して親しみやすい語り口で実践の記録が綴られた本書は、発酵と文化人類学の入門書ともなる地に足の着いた一冊に仕上がっています。ヒッピームーブメントを牽引した「Whole Earth Catalogue」を連想させるようなブックデザインも素晴らしい。
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