当店では『言の森』や詩誌『八月の水』などでもおなじみの、詩人・西尾勝彦さんの新作が届きました。奇妙なタイトルの響きに導かれページをめくれば、そこにはこの詩人独自の世界が広がっています。「耳の人は/森の/はじまり/と/おわり/そのあわいに/暮らしている」…連詩のようにつながってゆくそれぞれの作品のなかに、浮かんでは消えるような「耳の人」という響き。その不思議さとどこかおかしみが漂う雰囲気は、小さく印刷された文字とあいまって、独特の味わいを読者にもたらしてくれます。響きと意味、それぞれがないまぜとなって紡ぎだす豊かな魅力を持つ言葉の世界。この人ならではの、ユーモアと穏やかさを伴う知的な詩の深みが素晴らしい一冊です。活版で作成されたという表題の文字もとても美しく、優しいたたずまいもこの詩集の魅力のひとつです。
商品情報 著者:西尾勝彦 / 出版社:ブックロア / 130mm × 145mm / 68P / ソフトカバー
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